2026/06/16 19:00
現在、23歳のシンガー・ソングライター、冨岡 愛が6月6日に東京・LINE CUBE SHIBUYAにて、自身最大規模となる全国ツアー【TOMIOKA AI LIVE TOUR 2026 “愛が溶けないうちに”】のファイナル公演を開催した。
昨年11月に1st アルバム『愛’sCREAM』を発表し、今年2月には新曲「愛が溶けないうちに」や「Psycho」を加えて、『愛'sCREAM』を再構築したアルバム『愛が溶けないうちに』をデジタルリリースした。彼女の楽曲の多くは失恋の痛みや傷をテーマにしており、言いたくても言えなかった思いを音楽に昇華することで同世代の共感を呼んでいるが、ライブではまた違って聞こえるのが面白い。
オープニングを彩ったのは、〈アイスクリーム一つを半分個〉から始まるロックナンバー「デジャヴ」。哀感漂うメロディにのせて、元カレである男側の未練をアンニュイに歌う楽曲だが、〈愛に会いたくなっているんじゃない?〉というフレーズはライブを心待ちにしていた観客に向けて歌われているように感じた。さらに、〈久しぶりにギターでも弾いとく?〉という歌詞を体現するかのように、続く「ジェラシー」ではエレキギターをかき鳴らしながら、〈I miss you〉と観客一人ひとりと目を合わせるかのように歌唱。観客が総立ちとなってクラップを打ち鳴らすなかで、「劣り」で心と体を弾ませると、「かろやかに」では観客は勢いよくワイパーを繰り広げ、冒頭から心地よい一体感を生み出した。
〈言えない想いは宙に待っていて〉というフレーズが印象的なラブソング「831」でフロアを愛のムードで満たした後、「心に思い出として残るような最高の時間にするので、お互いの愛を確かめ合っていきましょう」と呼び掛けると、会場全体から歓声と拍手が湧き上がった。そして、「17歳のときに遠くに離れた友達に描いた曲です」という言葉から、未リリースの「Star 空」へ。アコギの弾き語りで〈きみにはわからない言葉で伝えに行こう〉と歌う、その切なくも優しい歌声には深みと豊かさがあり、アカペラのパートもあった「missing you」を含め、弾き語りの路上ライブを数多く経験してきたであろう彼女のシンガーとしての魅力がはっきりと伝わってくる場面となっていた。
冨岡の歌にアコギとピアノが伴奏をつけた渋谷限定の新曲「Lullaby」を経て、「今からみんながライブで聴きたいであろう曲たちを連続でやっちゃおうと思います」と呼びかけ、SNS総再生数8億回を突破したヒット曲「恋する惑星「アナタ」」で会場の熱気を上げると、冨岡はギターソロ中にステージに寝転んで万歳。「Psycho」ではオーディエンスがタオルを回して盛り上がると、冨岡は「サイコで最高!」と声を上げて喜んだ。
「この曲のサビをこの中から一人だけに向けて歌おうかなと思います。人と人は8秒以上目を合わせたら、恋に落ちちゃうんだって。この曲のサビはちょうど8秒なので、しっかりとEYEとEYEを合わせたいと思います」
そんなMCから、SNSに3年前に載せたことのある未リリースの「TIPSY」でたった一人のオーディエンスとしっかり目を合わせながら歌うと、ジャケットを脱ぎ捨て歌った「MAYBE」では未来のことはわからないけど、今はただ、あなたのそばにいたいというリアルな思いを表現。冨岡、ギター、ベースに加えて、ピアノまで観客と一緒に飛び跳ねた「HEART BEAT」、ノスタルジックな風景を引き連れてくる「あなたは懐メロ」と強靭なバンドサウンドで観客のテンションを引き上げると、アジア各国のバイラルチャートにランクインした「アイワナ」では観客による〈キスをしよう〉の大きなコールが実現。さらに観客が掲げた手が一斉に揺れた「delulu」や、冨岡に正面から眩いスポットライトが当たった「New Style」と続け、ライブはいよいよ終盤へと向かっていく。
ここで、「実は今日、初のホールなんです」と告白した冨岡は、「今回のツアーで新しいことに挑戦したいなと思い、ピアノ弾き語りをやってみようと思います」と語り、普段はギターで作曲する彼女がピアノで生み出したという「愛’sCREAM」を歌唱。〈It’s gonna be〉と〈いつ頃に〉という英語と日本語をミックスした韻の踏み方やリズムの付け方は英語が堪能なバイリンガルの彼女ならではであり、〈愛〉という歌詞を〈わたし〉と歌えるのも彼女にしかできないこと。新機軸ながらも彼女の音楽性を強く感じる楽曲の1番をピアノ弾き語りで歌いきると、2番の頭でバンドが加わった瞬間に温かく大きな拍手が上がった。
そして、失恋ソングながらも、冨岡が「ピアノの弾き語りが終わった安心感で笑顔で歌っちゃった」と照れた「グッバイバイ」では会場が一体となった大合唱が沸き起こり、バスドラの四つ打ちが観客の高揚感とジャンプを煽った「愛need your love」を経て、このライブ終了と同時にMVが解禁された新曲「soulmate」を披露。この曲も自分を失ってしまうくらいの恋心を綴ったポップなラブソングだが、ライブでは〈これからもずっとsoulmate〉という観客に向けたメッセージのように胸に響いた。
最後にニューアルバム『愛が溶けないうちに』をコンセプトにした本ツアーを振り返りながら、観客にゆっくりと語りかけた。「人と人のあいだの縁はすごく脆いもので、積み上げた関係性も、時にはアイスクリームが溶けてしまうかのように簡単に崩れてしまう。みんなも大切な人とお別れした経験があると思っていて。でも、本当に悲しいことは、大切だった人と会えなくなったとしても、朝が来て、お仕事や学校に行って、ご飯も食べて。たまには笑ったり、泣いたりもする。その人がいなくなったことよりも、意外と自分の人生は毎日進んでいくんだなということのほうが私は悲しいことなんじゃないかなと感じていて。今の私にとって一番怖いのは、愛が溶けてしまうことになんの抵抗もなくなってしまうことかなと感じてます」と話したあと、「家族や友達、恋人、仲間。いろんな形の愛があると思うんですけど、身近にいる大切な人たちに、伝えられるうちに言葉で愛をちゃんと伝えて欲しいなと思います」というメッセージを観客に向けて真っ直ぐに届けた。
ホールを見回しながら、「毎日、少し生きづらいなと感じている人もいるかもしれないし、現実と理想のギャップが大きくて、なりたい自分になれなくて苦しんでる人もいるかもしれない。逆にすごくハッピーに毎日を過ごしてる人もいると思う。いろんな人生を送っているみんなが、こうして一つの空間に集まって、この音楽を生で聴きたいと思ってくれるのは当たり前のことじゃないと思う。今日という時間を私に注いでくれて本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えた彼女は、「少し孤独な夜や憂鬱な朝、またはハッピーな瞬間とか。これからも音楽を通して、みんなの人生の一部に交われたらうれしいです」と決意を表明。そして、4年前、19歳の夏に本会場のエントランス前で路上ライブをしようとして、警備員に止められたエピソードを明かして笑いを誘うと、「今度はLINE CUBEの中でライブができて幸せです」という言葉には、この日、一番大きい拍手が送られた。全22曲で約2時間に及んだライブのラストナンバーは、〈愛が溶けないうちに好きだと/ちゃんと伝えればよかったな?〉というラインに強い思いを込めたロックバラード「愛が溶けないうちに」。半分個にしたアイスクリームは溶けてしまったが、愛はちゃんと言葉にしないと伝わらないという思いは観客一人ひとりの胸にしっかりと届いたはず。場内に小さな光の粒が花びらのように舞い落ちるなかで、さまざまな形の愛や哀、さらに、I(私)やEYE(目)といった、多様な “あい”の交感を果たしたライブは温かなエンディングを迎えた。
Text:永堀アツオ
Photo:YUSUKE TAKAMURA
◎公演情報
【TOMIOKA AI LIVE TOUR 2026 "愛が溶けないうちに"】
5月9日(土)福岡・BEAT STATION
5月16日(土)大阪・BIGCAT
5月17日(日)愛知・DIAMOND HALL
6月6日(土)東京・LINE CUBE SHIBUYA
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